ここでは日鉄鉱業について、
投資の参考にできる情報と視点、割高/割安かどうかを紹介します
各所に記載している数値は2022年11月執筆現在のものです
2022年11月4日第2Q決算更新
目次
ココが投資ポイント
日鉄鉱業についての投資ポイントです
- 日本製鐵㈱(現日本製鉄㈱)の鉱山部門が独立して設立
- 売上の約9割を資源事業が占め、石灰石(国内)と銅(海外)の鉱山開発が主力
- 他に機械・環境・不動産・再生可能エネルギーの各事業を展開
- 2022.3期~2024.3期の中期経営計画にて大型投資の着実な実行を掲げる
- 烏形山鉱業所第3立坑は2024.3期の稼働、八戸鉱山新鉱区およびアルケロス銅鉱山の開発推進にて2025.3期以降の本格稼働を目指す
- 権益を有する銅鉱山は1つのみと代替先がないことはリスク
- 銅は価格変動が大きく業績への影響大、石灰石は価格・供給量ともに安定的
- 2022.3期は銅価格の上昇および円安、石灰石の販売増により大幅な増収増益
- 財務基盤は安定的、資源安時のみ評価損・減損リスクあり
- 2023.3期第2Q実績:
売上高:810(14.0%)
営業利益:90(2.9%)
純利益:55(5.5%)
単位:億円(前年同期比%) - 配当性向は30%を原則、配当利回りは4%台
投資ポイントの中で注目すべき視点を見ていきます
投資ポイントの視点
- 資源価格および需給
- リスク
これらの視点を詳しく見ていきます
視点①資源価格および需給
資源事業が売上高の約9割を占めることからも、日鉄鉱業は資源株と言えます
資源株は取り扱う資源の価格と需給に業績が大きく左右されるため、
資源価格と需給に着目することが最も大事な視点です
日鉄鉱業では、主に石灰石と銅の鉱山を国内外に保有し、この2つが主力であり、それぞれの資源価格と需給が業績を左右しています
好調だった2022.3期も石灰石の需要増による増収、銅は販売数量は減少したが、銅価格の大幅な上昇と円安の影響により大きく増収増益となっています
日鉄鉱業
上記は2010.3期以降の売上高および当期純利益、銅価格の年単位の推移です
銅価格は各年の3月末時点の価格を基にしています
これを見ていただくと、日鉄鉱業は銅だけではなく、石灰石をはじめとする複数の資源を扱っているため、銅との直接的相関は見出しにくいですが、
2015.3期以降は銅の価格に連動して、業績がある程度の影響を受けていることがわかります
石灰石は銅などと比較して価格変動は小さく、長期で緩やかに上昇している状況です
そのため、まずは銅の価格と需給を先行指標に動くと比較的勝てる確率は高くなるといえます
ただし、同じ資源株の住友金属鉱山(記事はこちら:住友金属鉱山)と比較すると、資源価格と需給から業績や株価の先読みの確度は低いです
視点②リスク
日鉄鉱業の株価と業績に大きな影響を与える要因は視点①で説明した通りです
これのみと言ってもいいくらいですが、その他認識しておいたほうがよりリスクをまとめておきます
権益のある銅鉱山が1つのみである点です
現在、銅の資源開発を行っているのはチリにある「アタカマ鉱山」のみです
この鉱山が枯渇または事故や地政学リスクなどで操業できなくなった場合には、現在代替先がなく銅の供給がストップしてしまうリスクがあります
この点は、現在同じチリにはなりますが、アルケロス鉱山の開発を進めており、早期稼働を期待したいところです
他に業績・財務の点でもリスクがありますが、その点は後の「財務/業績」のところで紹介していきます
補足:2023.3期第2Q実績の考察
2023.3期第2.Q実績では、
売上高:810(14.0%)
営業利益:90(2.9%)
純利益:55(5.5%)
単位:億円(前年同期比%)
と1Qからは増益幅は減少するも、増収増益を維持でき、通期計画も上方修正が発表されました
しかし、内容を見てみると円安の恩恵を大きく受けた印象が強く、今後の業績には懸念が残ります
大きな理由としては、主力である石灰石・銅ともに販売数量が前年同期比で減少しており、今後も景気後退による需要減を考慮すると、販売数量は減少傾向となる可能性も高いと見ています
また、銅の価格も2023.3期2Q時点では、前年同期比で価格は約1割程度下落しています
また、円安の効果ですが、現時点で、ではありますが、ピークからは円高方向へ振れており、まだどうなるかはわかりませんが、そろそろピークアウトが近づきつつある印象です
これを考慮すると、これ以上の円安効果を享受することは難しく、2023.3期は円安の効果が大きく出る想定ですが、今後はその恩恵は小さくなると想定しています
また、徐々にではありますが、需要減により銅価格も下落しており、数量・価格は業績の主要要因であるため、円安効果以外の前向きな材料は見当たらず、今後は厳しい状況が続くと見ています
現在の株価は割高?割安?
※以下は株式分割考慮後の株価を前提としています
株価については、銅が更なる高値へ上昇する可能性は低く、2022年7月に安値を付けましたが、業績が堅調なこともあり、以降は3,000円程度まで上げてきています
それでも2022年3月には3,800円を超えており、急騰してきた反動とはなりますが、2割程度下落している状況です
銅価格下落の影響もあり、業績も2023.3期は計画も減益、四季報などでは2024.3期が減収減益と厳しい予想となっています
業績が悪化傾向にあるタイミングで購入を選択する理由がないため、まずは銅の価格の下げ止まりのタイミングを待ちです
過去の株価からの買い目線は、2,000円あたりまで下落を待って買いたいところです
また、何か動きがあれば順次更新していきます
他の個別銘柄への投資ポイントについても興味があればこちら
個別株への投資の方法について興味あればこちら
現在の僕の投資の状況に興味があればこちら
参考:財務/業績
説明してきた通り、資源株は資源価格と需給の動向が最重要ポイントで見るべき視点です
財務やベースとなる業績は上記ほど重要性はないため、参考として紹介しておきます
業績
資源事業が売上高と利益のほとんどを占め、2022.3期の利益の上振れもほとんどすべてが本事業によるものです
2023.3期業績計画についてですが、売上高は、
2022.3期実績:1,490億円
2023.3期計画:1,500億円
とほぼ横ばい計画です
銅価格は下がる一方、為替は円安となる予想から同水準が計画されています
営業利益では、
2022.3期実績:157億円
2023.3期計画:110億円
と30%の減益予想です
減益要因のほとんどは、資源事業の金属部門の利益の落ち込みが大きく、銅価格の下落が主な要因です
これらから言えることは、業績に関わる大きなリスクは資源価格と需給で、見るべきポイントはこの点のみとしても良いくらいです
資源価格と需要の部分を除けば、主力の石灰石は国内の各鉱山を自社保有しており、供給面は事故等ない限り安定的です
銅はチリに鉱山を有しているため、国内と比較して地政学リスクなどが高めですが、自社開発・供給できる点は大きな強みです
少し先にはなりますが、同じくチリに位置するアルケロス銅鉱山も稼働になれば、大きな成長も期待できます
2022.3期の火災事故などのリスクはありますが、資源価格と需給の影響を除く業績面は安定的成長が見込めます
短期的には資源価格の下落とともに、業績は悪化すると予想されますが、中長期的には伸びていく可能性が高いと見込んでいます
財務
主だった貸借対照表の項目と指標を見ていくと、
※以下は日鉄鉱業の2022.3期実績数値に基づく、単位:億円
・安全性評価
現預金:332
借入金:207
現預金 > 借入金 より実質的無借金経営
販管費に対する現預金残高:1.7年分程度
自己資本比率:60.7%
上記より財務基盤は安定的
・評価損・減損リスク項目
棚卸資産:206
有形・無形固定資産:708
投資有価証券:291
この合計金額すべてが損失になることはないですが、上限金額として認識しておきます
その他項目も認識できる大きなリスクは上記以外にはなく、投資先として財務面は現在のところは良好と結論付けることができます
会社概要
証券コード/銘柄名:1515/日鉄鉱業㈱
設立年/上場年/上場市場:1939年(日本製鉄の創業:1899年)/1954年/プライム
業種コード/業種:1050/鉱業
決算月:3月
事業内容:日本製鉄の鉱山部門が独立して設立、今も第一位株主は日本製鉄。国内は石灰石、チリにて銅の鉱山を保有、資源事業が売上の約9割と主力
売上高/営業利益/経常利益/当期純利益(伸び率:%)単位:百万円
- 23.3(会社予想):154,000(3.3)/13,500(▲14.1)/13,500(▲18.7)/7,500(▲19.2)
- 22.3:149,082(25.1)/15,715(80.1)/16,605(72.4)/9,279(147.7)
- 21.3:119,159(1.4)/8,726(15.2)/9,629(20.2)/3,746(▲17.1)
- 20.3:117,502(▲4.8)/7,576(1.3)/8,012(8.9)/4,518(▲15.7)
- 19.3:123,372(3.9)/7,479(▲11.7)/7,356(▲16.2)/5,360(9.9)
最後に
僕は日本の個別株への投資をメインにしています
また、その中でも成長性の高い株です
そのため比較的リスクは高めなものが中心です
これまで書いた記事もリスクは高めだと認識しています
その中で自分なりに分析して勝負する
時には損失が先行することももちろんありますが経験値としては積み上げられ、
そして、利益を積み上げることができたと思っています
投資はどうしても自己責任を伴うものです
どうせなら自分自身で調べてみたりして信頼できるものへ投資すべきです
なぜなら失敗してもそれが経験になり将来の投資につながるからです
ここまで読んでいただいてありがとうございます
一緒に株式投資を盛り上げていきましょー!
注意事項
※投資判断はご自身の責任において行うようにしてください
記載の内容はあくまでも僕個人の見解と情報収集によるものです
そのため、必ずしも正確、適切な情報を保証しません
また、データが古くなっている場合もありますのでご活用の際にはご注意ください