ここでは新生銀行について、
投資の参考にできる情報と視点、割高/割安かどうかを紹介します
各所に記載している数値は2022年7月執筆現在のものです
2022.7.29第1Q決算更新済
目次
ココが投資ポイント
新生銀行についての投資ポイントです
- 2021年12月よりSBIホールディングス(以下、SBIHD)の連結子会社化
- 2023.1.4より「SBI新生銀行」へ名称変更予定
- 貸付による金利収入の他、レイク、アプラス収益およびリース事業などが主力
- 業務収益に対する利益率が、都市銀行系やあおぞら銀行などは15%水準以上、新生銀行は11~12%程度、2022.3期は5%台と低水準
- 業務粗利益に対する与信費用比率と経費率の合計で80~85%と異常に高い
- 2022.3期は株式や債券の売却などの運用収益で約▲100億円の損失計上
- 株式や債券などの評価額は約▲100億円と含み損
- 2023.3期第1Q実績:
経常収益:958.1(3.7%)
業務純益:4.3(▲76.0%)
純利益:▲5.9(-)
単位:億円(前年同期比%) - 2023.3期計画に対するPER14倍台と他の銀行系と比較して高い
これらの投資ポイントから注目すべき視点として・・・
投資ポイントの視点
- 残念ながら多くのマイナス要因しか見つからない
- 期待できる点はSBIHDによる構造改革などの業績改善のみ
これらの視点を順に見ていきます
視点①多くのマイナス要因
マイナス要因をざっと大まかに書き出してみると、(参考:あおぞら銀行2022.3期実績)
- 業務粗利益に対する経費率70%と高い(56%)
- 業務粗利益に対する与信費用も10~15%と高い(3.6%)
- 株式や債券の売却損と含み損が2022.3期の合計約▲200億円(+80億円)
参考に()内のあおぞら銀行2022.3期績と比較していただくとよくわかると思いますが、
業務粗利益に対して経費と与信費用の合計で、80~85%も費やしてしまっていたら高い利益が出るはずもなく、高コスト体質が変わらない限り投資対象としては厳しいです
債券や株式などの有価証券に対して、メガバンクなどは毎年売却益を計上し、まだ多額の含み益も持っています
あおぞら銀行も金額は大きくはないながらもまだ含み益の状態です
一方、新生銀行は2022.3期は売却損の計上と含み損を抱えてしまっており、上記の金融機関とは将来の業績への影響も明暗分かれてしまっています
2023.3期第1Qでは、Latitude株式の減損損失を損益に計上したため、見た目上の損益が大幅に悪くなっていますが、
純資産の部では、為替の影響を含めた含み評価損益240億円近く(税引後)改善しており、実質的にはプラスともいえます
この異常な高コスト体質と有価証券を含めた資金の運用力の問題が、利益が出せない要因であり、これまでの間になぜ抜本的な改革を行われてこなかったのか疑問でしかありません
ただし、一部事業の収益力自体はそれほど悪くなく、レイクALSAを運営する新生フィナンシャル㈱や㈱アプラスなど、利益をけん引する子会社もいくつもあり、期待できる面はあります
視点②SBIHDによる業績改善期待
新生銀行が子会社化されたばかりの現時点ではまだ期待の段階でしかないですが、
SBIHDが主導する新生銀行の2025.3期までの中期経営計画では、純利益700億円(2022.3期約200億円)を目指すとされています
実績では、これまで提携してきた地方銀行は現在の金利上昇による債券運用のマイナスを除けば、業績は伸びており、海外拠点の銀行子会社も収益改善がなされています
SBIHDグループの証券などとのシナジーによる業績改善も期待できるところです
現時点の新生銀行には投資するメリットは見当たらない一方、中期的な目線でのこの中期経営計画の実現に対する投資は検討の余地はあると考えます
補足:2023.3期第1Q実績の考察
以下、銀行独特の名称が出てくるため、以下のイメージで読んでください
経常収益:売上高的なもの
業務粗利益:売上総利益的なもの
経費:販管費的なもの
業務純益:営業利益的なもの
経常収益は多少でも伸びており、評価できる点でしたが、業務純益が大135億円減少しており、予想が外れてしまいました
この業務純益の大幅な減少が、今回の新生銀行の第1Q純損失の要因で具体的にその要因を見ていきます
業務純益 = 業務粗利益 - 経費
として見てもらうと大筋イメージしていただけると思います
経費は前年同期比でほぼ同水準です
ということは業務粗利益が大きく減少しました
その内訳を見ると、非資金利益(貸付などではないもの)の「その他の非資金利益」に当てはまる部分で160億円程度減少しており、ここに原因があります
なお、「その他の非資金利益」を除けば、資金利益も非資金利益のその他以外の部分もすべて増益になっています
※もっと細かく部門別に区分すれば、減益部門もあります
「その他の非資金利益」:リース、割賦、金銭の信託運用、有価証券の売却損益、海外事業など
「その他の非資金利益」の中でも、「海外事業」で上記のほぼすべてのマイナスを出しています
海外事業は海外子会社など、海外で展開している事業になります
海外事業のLatitude株式について減損損失165億円を計上したことが要因となっています
これは買収の際にLatitude株式を高値つかみしてしまったことも要因かもしれませんが、昨今の世界的な株価下落の要因のほうが大きく、新生銀行自体の収益力が落ちたわけでは決してありません
この特殊要因を除く、実質業務純益(本業による利益)は通期業績予想を上回るペースで進捗できており、前年同期比でも増益です
※なお、Latitude株の株価は第1Q末の6月30日時点では、1,190AUDでしたが、7月28日現在では1,640AUDまで回復してきており、このまま回復すれば上記の減損損失は、第2Q時点で解消される可能性も高いと見ています
現在の株価は割高?割安
SBIHDから新生銀行を子会社化するためのTOB前の株価1,400円台から現在は2,000円前後と、まだ40%程度高く、PERも14倍台と銀行株としてはかなり高いPERです
すでに書いたように新生銀行のみでの収益力からするとかなり割高であると言わざるを得ません
ここにSBIHD主導による中期経営計画実現に向け、具体的なものが見えてくればバランスは取れてくるだろうと考えます
すでに2023.3期第1Qでも、損益上は大幅な減益ですが本業部分は増収増益となっており、効果が既に出始めているとも見て取れます
また、もしかしたらSBIHDのグループ再編に伴って、株式の追加取得という可能性も残されてはいます
そのため、現時点での投資は全くオススメしませんが、この先に何か具体化するプラスの材料が出てきた際には検討の価値は出てくるかとの判断です
また、何か動きがあれば順次更新していきます
他の個別銘柄への投資ポイントについても興味があればこちら
個別株への投資の方法について興味あればこちら
現在の僕の投資の状況に興味があればこちら
会社概要
証券コード/銘柄名:8303/㈱新生銀行
設立年/上場年/上場市場:1952年/2004年/スタンダード
業種コード/業種:7050/銀行
決算月:3月
事業内容:
経常収益/経常利益/当期純利益(伸び率:%)単位:百万円
- 23.3(会社予想):-(-)/-(-)/35,000(71.7)
- 22.3:373,328(▲0.2)/28,299(▲36.3)/20,385(▲54.8)
- 21.3:374,247(▲6.3)/44,398(▲13.0)/45,109(▲1.0)
- 20.3:399,503(7.3)/51,036(▲7.9)/45,575(▲12.9)
- 19.3:372,243(▲3.0)/55,397(▲2.5)/52,319(1.8)
最後に
僕は日本の個別株への投資をメインにしています
また、その中でも成長性の高い株です
そのため比較的リスクは高めなものが中心です
これまで書いた記事もリスクは高めだと認識しています
その中で自分なりに分析して勝負する
時には損失が先行することももちろんありますが経験値としては積み上げられ、
そして、利益を積み上げることができたと思っています
投資はどうしても自己責任を伴うものです
どうせなら自分自身で調べてみたりして信頼できるものへ投資すべきです
なぜなら失敗してもそれが経験になり将来の投資につながるからです
ここまで読んでいただいてありがとうございます
一緒に株式投資を盛り上げていきましょー!
注意事項
※投資判断はご自身の責任において行うようにしてください
記載の内容はあくまでも僕個人の見解と情報収集によるものです
そのため、必ずしも正確、適切な情報を保証しません
また、データが古くなっている場合もありますのでご活用の際にはご注意ください