ここではあおぞら銀行について、
投資の参考にできる情報と視点、高配当株として今後も高配当が継続可能かどうかの点を紹介します
各所に記載している数値は2022年11月執筆現在のものです
2022.11.11第2Q決算更新済
目次
高配当株としての結論!
現在の株価水準での配当利回りは6.0%程度です
この配当水準を維持できるかどうかについて、高い確率で維持できると結論付けることができます
もちろん、2021.3期のようにコロナ禍の世界的不況期では下がりましたが、このレベルでなければ問題ないと見ています
現在はインフレや景気後退懸念が高まるなど、当面は厳しい状況が続くかもしれませんが、あくまで長期投資としての目線です
過去の業績を見れば、2022.3期よりも2割前後高い利益を獲得している年も多くあります
同水準まで利益を伸ばせれば、現在の株価水準に対する配当利回りが7%前後まで高くなることも見込める有望な銘柄です
どういった点からこの結論を導き出せるかを見ていきます
ココが投資ポイント
あおぞら銀行についての投資ポイントです
- 国内は本支店20店舗と海外の5拠点(ニューヨーク、ロンドン、上海、香港、シンガポール)のみとスリムな組織体が他行との差別化
- 子会社にGMOあおぞらネット銀行の他に証券、投信、債権回収、不動産投資顧問、企業投資
- 不動産や事業再生などの専門分野への投融資に強み
- 2015年に公的資金を完済
- 2022.3期末の貸付残高:3兆3,171、対する貸倒引当金:486億円(1.46%)
- 2022.3期末の有価証券の残高:1兆4,781億円、対する評価損益:+52億円
- ROE:7%台は銀行業の中では群を抜く高さ
- 経費率が低く、高収益体質
- 配当利回り:6.0%、配当性向:50%、配当は四半期毎の業績をベースに年4回
過去の配当実績:
2019.3期:154円
2020.3期:156円
2021.3期:124円
2022.3期:149円
2023.3期:154円(予定)
※1,2Qともに各38円
新型コロナウイルスの影響を受けた2021.3期を除き、150円前後で安定的に配当 - 2023.3期第2Q実績:
業務粗利:433(▲17.4%)
業務純益:150(▲41.4%)
純利益:153(▲20.8%)
単位:億円(前年同期比%)
投資ポイントの視点
あおぞら銀行においては、
- 強み
- リスク
これらの視点を詳しく見ていきます
視点①強み
・スリム化された組織体
あおぞら銀行の特徴は、本支店20店舗と海外拠点5拠点と他行と比較して拠点数の少なさが顕著な点です
他行の店舗と比べて、あおぞら銀行の店舗を見かけることはほとんどないと思います
この効果が如実に表れている点が「経費率」です
あおぞら銀行公表の直近3年間の経費率は56~57%です
比較として、
※以下、
MUFG:三菱UFJフィナンシャル・グループ
SMFG:三井住友フィナンシャルグループ
みずほ:みずほフィナンシャルグループ
大手3行との10年間の経費率推移の比較
あおぞら:3メガバンク比較/経費率※経費率:経費/連結粗利益
あおぞら銀行の経費率の低さは群を抜いており、過去10年間一度も大手3行に上回られたことはありません
他行も支店の削減などによりコスト圧縮に取り組んでいますが、あおぞら銀行と同程度にまで到達するには難しい水準です
これが高収益で高配当を続けてこれた大きな強みの1つです
・高収益体質
上記のスリム化された組織体による経費率の低さは、高収益体質にもつながる要素ですが、あおぞら銀行の高収益体質がどの程度優れていくかを他社比較で見ていくと、
・あおぞら銀行
ROA:0.7%、ROE:7.1%
・MUFG
ROA:0.4%、ROE:6.7%
・SMFG
ROA:0.4%、ROE:5.9%
・みずほ
ROA:0.2%、ROE:5.7%
※ROA:総資産経常利益率
総資産に対して経常利益をどれだけ稼ぐくことができているかを示す、収益の効率性を示す指標
ROE:自己資本当期純利益率
自己資本に対して当期純利益をどれだけ稼ぐことができているかを示す、主に株主目線の収益の効率性を示す指標
※上記各数値は各社の2022年3月期決算短信の公表数値
大手3行との10年間のROE推移の比較
あおぞら:3メガバンク比較/ROE
見ていただいた通り、ROEでも2015.3期以降は一度SMFGに少し上回られただけで、大手3行と比較して上回っていることがわかります
推移は載せていませんが、ROAは大手3行を過去10年すべて大きく上回っています
・高配当銘柄としての安定性
上記2点から好調な時だけではなく、不況・不調な時期においても低コスト運営ができ、収益性を高く保てることは高配当を維持するうえで重要なポイントとなります
なお、現在の配当額水準を配当性向50%で維持するとした場合の純利益は350~360億円程度です
あおぞら銀行の過去10年間の純利益を見ていくと、
純利益:350億円を超えたのは8期/10期、その中でも400億円を超えたのは6期/10期です
400億円を超えたのは事業が好調というよりは、株式等の売却益や与信費用に関わる部分で利益が上振れたというスポット要因もありますが、
過去の結果からはコロナ禍のやむを得ない期を除くと、深刻な不況期以外は現在の配当水準は維持できる見込みが高いと見ることができます
視点②リスク
銀行株でリスクとなりやすい点が、「貸付に対する与信費用」と「有価証券の保有額とその評価額」の2点です
あおぞら銀行だけではなく、銀行株はほとんど例に漏れず潜在的に存在するリスクです
多くの銀行が、リーマンショックの時などにこの2点で過去多額の損失や費用を計上しています
貸付金額とその与信費用
2022.3期末の時点での貸付金額は3兆3,171億円、総資産の約50%を占めます
これはあおぞら銀行が高いのではなく、銀行は預金を集めて貸出して利息を得るビジネスモデルであるため、特に問題がある点はないです
上記の貸付金額に対する貸倒引当金(与信費用として過去計上した引当)は、486億円で貸付金額に対して1.46%となっています
これは特段高い低いという水準ではないです
ただし、リーマンショックや不況時になるとこの比率が上昇します
仮に現在の残高に対して1%上昇するだけで331億円の追加の費用計上が必要となり、2022.3期の経常利益が463億円より、その大半が吹き飛んでしまう大きさです
また、最近はマレリの経営破綻でも各金融機関の貸倒れにより損失負担が話題になりましたが、
大口融資先が経営破綻などした場合には、貸付すべてが損失となるリスクも常にあります
これは、銀行株に常に存在する損失リスクであり、個人投資家レベルではどうしようもないですが、このような大きなリスクがあることは知っておくことが大事です
なお、直近のあおぞら銀行では、貸倒に対する与信費用は年間で40億円程度を費用計上しています
有価証券の多額の保有とその評価額
2022.3期末時点での有価証券の保有額は1兆4,781億円、総資産の約22%を占めています
これに特定取引資産も含めれば24%と約1/4の水準まで高まります
これに対する評価額は、+52億円と保有額と比較して少額、2021.3期末から▲375億円と大きく評価益を減少させています
この点については、大手行は多額の含み益を持っており、大手行との比較では大きく見劣りしてしまう点です
有価証券の内訳/単位:億円(2021.3期からの評価額の増減額)
国債/地方債:2,405(▲19)
社債:1,729(▲5)
外国債券:5,360(▲238)
ETF:1,530(▲105)
組合出資:1,378(▲1)
投資信託:930(▲7)
REIT:760(▲6)
株式:315(▲0)
その他:369(+8)
となっています
国内および海外の債券が合計で1兆円近くあり、債券において金利上昇は評価額のマイナスとなります
足元では、債券は金利上昇によるマイナス、株式等も金利上昇や景気後退による下落リスクを抱えており、これだけ多額の有価証券の保有は将来的な評価損のリスクを抱えていることを示しています
実際に2023.3期第2Q末時点での評価損益は860億円の評価損となっています
あくまでまだ含み損の
なお、ほとんどの有価証券は会計上の規則により、通常は直接損益には影響しない評価損益です
ただし、大きく評価額を下げた場合には評価損として損益に多額のマイナス影響を与える場合があるため要注意です
補足:2023.3期第2Q実績の考察
2023.3期第2Q実績は以下の通りでした
経常収益:954(42.6%)
業務粗利:433(▲17.4%)
業務純益:150(▲41.4%)
純利益:153(▲20.8%)
単位:億円(前年同期比)
前年同期比での主な差異:
連結粗利益:▲91億円
経費:▲11億円
与信費用:+16億円
税金関連費用負担:+16億円
※上記は増益要因「+」、減益要因「▲」としています
前年同期比では、1Qに続き大幅な減益となっています
大きな要因としては、上記の主な差異の通りですが、連結粗利益の差異要因を細分化していくと、
資金利益:+25億円
非資金利益:▲116億円
資金利益では、貸出残高の増加および貸出金などの利ザヤの上昇により、+25億円で10%超の順調な伸びとなりました
一方、非資金取引では、各種手数料などの役務収益は堅調でしたが、
国債等の債券損益:23億円の損失(前年同期比▲78億円)
トレーディング利益や仕組債販売利益などの特定取引利益:18億円の利益(前年同期比▲61億円)
それぞれ大幅な減益となったことが要因となっています
次に与信費用ですが、貸出先の状況改善などによる貸倒引当金の減少、また、償却(費用化)した貸出が回収できたことによる利益も11億円上乗せされ、大きく改善しました
銀行としての元々の本業である、資金利益と与信費用を含む資金取引の部分では、大きく利益を伸ばせましたが、
収益を伸ばしてきていたトレーディングや運用の部分では、2022年からの急激な利回り上昇による、債券価格の減少などの影響を大きく受け、非資金利益が大きく減益となりました
特に外国債券での評価損が854億円と2022.3期末から3倍近くになっており、債券運用は厳しい状況となっています
なお、上記の資金利益および非資金利益の結果、連結粗利益が大幅に減少した一方で、経費は人件費を中心に増加したため、
経費率:2022.3期:56.1% → 2023.3期第2Q:67.2%
と大幅に上昇してしまいました
運用等収益は市況に大きく影響されてしまうことで、減益となる程度いたしかたありませんが、本業である資金取引の収益性が向上してきている点は、評価できます
ただし、通期計画の業務純益が460億円に対し、上期では150億円の実績と大きく出遅れている点は、下方修正の可能性含めて懸念しておくべき点です
会社概要
証券コード/銘柄名:8304/㈱あおぞら銀行
設立年/上場年/上場市場:1957年/2006年/プライム
業種コード/業種:7050/銀行
決算月:3月
事業内容:旧日本債券信用銀行。スリムな事業組織と早くから新たなものを取り入れる経営が特徴。GMOとのネット銀行が子会社
経常収益/業務純益/経常利益/当期純利益(伸び率:%)単位:百万円
- 23.3(会社予想):-(-)/46,000(▲3.8)/49,500(6.9)/36,000(2.8)
- 22.3:134,737(▲13.5)/47,839(12.1)/46,294(18.8)/35,004(20.8)
- 21.3:155,755(▲15.5)/42,669(0.8)/38,982(▲10.0)/28,972(3.0)
- 20.3:184,406(15.2)/42,312(23.0)/43,330(▲9.3)/28,142(▲22.1)
- 19.3:160,136(7.6)/34,407(▲15.3)/47,736(▲17.6)/36,130(▲16.1)
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最後に
僕は日本の個別株への投資をメインにしています
また、その中でも成長性の高い株です
そのため比較的リスクは高めなものが中心です
これまで書いた記事もリスクは高めだと認識しています
その中で自分なりに分析して勝負する
時には損失が先行することももちろんありますが経験値としては積み上げられ、
そして、利益を積み上げることができたと思っています
投資はどうしても自己責任を伴うものです
どうせなら自分自身で調べてみたりして信頼できるものへ投資すべきです
なぜなら失敗してもそれが経験になり将来の投資につながるからです
ここまで読んでいただいてありがとうございます
一緒に株式投資を盛り上げていきましょー!
注意事項
※投資判断はご自身の責任において行うようにしてください
記載の内容はあくまでも僕個人の見解と情報収集によるものです
そのため、必ずしも正確、適切な情報を保証しません
また、データが古くなっている場合もありますのでご活用の際にはご注意ください