企業分析をするための有益な方法の1つに「会社の過去を知ること」があります
「会社の過去を知ること」の重要性については、「企業分析③会社を知る(過去を知る)」にて詳しく紹介しているので、ご参照ください
また、「企業分析①会社を知る(売上/原価/販管費とは?)」では、企業分析に最も大事と考える「売上高」、「原価」、「販管費」についての基礎部分をまとめています
本記事もこの3点について見ていくので、事前に「企業分析①」の記事を読んでいただいて、3点の基礎を知っていただくと理解が深まります
ここではこの「企業分析③会社を知る(過去を知る)」の中で紹介したうち、業績の変動、特に以下の3点を知ることが、企業分析を深めていく上で重要と考えており、深堀して紹介していきます
- 売上の変動を知る
- 原価率の変動を知る
- 販管費(率)の変動を知る
なお、この記事を最初に読まれている方は、上記の「企業分析①」と「企業分析③」以外に、
も参考にしてください
目次
売上の変動を知る
企業の業績にとってある意味最も重要とも呼べる項目が「売上高」です
なぜ重要かはみなさんご存じのところかと思いますので説明は省略しますが、
重要だとわかっていても売上高を見ているだけでは、会社のことを深く知ることは難しいです
この問題の解決には見方が重要!
ということで過去からの売上の変動を見ていきましょう
「企業分析③」でも紹介した通り、
やるべき1つ目:過去5年分くらいの業績を四半期毎に時系列で並べ、眺めてみる
そうするとその会社の売上高が伸びているのか、横ばいか、減少しているのかの傾向が読み取れます
大まかな傾向が読み取れると、
やるべき2つ目:その傾向の根拠を調べる
伸びている、横ばい、減少している、それぞれの要因を具体化していきます
過去のことであるため、詳しく調べれば要因までの具体化は可能です
もし会社資料など収集できる情報からのみでは不明点が残る場合は、IRへ問い合わせするなどして不明の解消に取り組んでみてください
やるべき3つ目:今後もその傾向が継続するか予想する
難しいのはこの3つ目です
この点はあくまで予想のため、絶対的なものはなく、1つ目と2つ目から確度の高い将来を予想していく作業です
そのためもちろん外れることも多々ありますが、
「なんとなくこの会社は伸びそう」のような漠然としたイメージを数値化していくことで、実際にどのように、どの程度伸びていくかを具体化することができます
ここで自分がイメージしていた成長と実際に予想した成長に違いがあったような場合には、投資の判断を変えることも検討できます
実際にこの1つ目から3つ目のやり方を説明することは、銘柄によって特性など違うため一概には言えないのですが、
例を挙げると、
過去5年間の売上推移で、前半3年は10%増収、直近2年間が20%増収だった場合に
①増収が継続している要因を調べる
②直近2年間の売上の伸びが大きくなった要因を調べる
➂①と②の要因が今期以降も継続するかどうかを調べて、判断する
④以上から今期以降の売上予想を立てる
①では比較的長い期間の売上のトレンドの把握
②では①のトレンドが変わった(加速した、減速した)要因の把握
➂で①や②のトレンドが今後も続くかどうかの検証
④で①から③を業績数値へ落とし込み
の流れで進めていきます
説明が漠然としていて申し訳ないですが、
実際にいずれかの銘柄について、上記を基に進めていただければやるべきことや今期以降の予想をするための材料は集めることができます
同じような流れで次の「原価率」、「販管費率」についてもやっていきましょう
原価率の変動を知る
売上高のことが把握できてくると、次に理解をしないといけない項目が「売上原価」です
この原価は売上高に連動して発生する費用であるため、「原価率」という形で売上高に紐づけて理解することが大切です
特に「原価率」というのは、売上高に対する原価の割合であるため、売上高に対して原価がどのように、どの程度発生し、変動しているかを示しています
原価はあくまで売上を獲得するための費用であるため、原価を見るときは必ず売上とセットで見るようにしてください
この視点で「原価率」を理解していくようにしましょう
「原価率」も「売上」の時と同様に、やるべき1つ目から3つ目まで順に行っていきます
ここでも難しいのはやはり3つ目で、この3つ目の予想を1つ目と2つ目を通じた分析により、傾向を把握し、その要因を具体化することで今後の予想につなげていきます
販管費(率)の変動を知る
売上高と原価のことが把握できてくると、3つ目の項目は「販売費及び一般管理費(販管費)」です
この販管費は売上高に連動・・・をするばかりのものではなく、あくまで会社が経営や事業運営を続けるために発生する費用です
会社における「販管費」の特性を知り、また、売上高に対してこの「販管費」がどのように変動しているかを示す「販管費率」の変動を知ることが大切になります
「企業分析①会社を知る(売上/原価/販管費とは?)」でも紹介した通り、販管費は性質の違いから大きく「販売費」、「一般管理費」、「研究開発費」の3つに区分されます
また、「固定費」と「変動費」のそれぞれの性質でも区分ができる場合も多いですので、最低でもこの2つの区分で会社の販管費の特性を意識するようにしてください
これらの性質をそれぞれ把握したうえで、売上との相関も意識しながら見ていくと理解が深まります
※銘柄の特性など必要により、もっと区分を細かくしても良いです
この3番目として「販管費(率)」を、この3区分(または固定費/変動費の2区分)を意識した視点で理解していくようにしてください
理解を深めるための進め方は、「売上」、「原価率」の場合と同様ですが、念のため再掲しておきます
「販管費(率)」も「売上」の時と同様に、やるべき1つ目から3つ目まで順に行っていきます
販管費(率)もやはり難しいのは3つ目
この3つ目の予想を1つ目と2つ目を通じた分析により、傾向を把握し、その要因を具体化することで今後の予想につなげていきます
もしもっと手間をかけても大丈夫という方は、会社資料などから「販売費」、「一般管理費」、「研究開発費」のそれぞれの金額が把握できる場合には、
「販管費」の合計とともに、3区分に分けた各比率も算出して同じように把握していくと特性など具体性が増し、オススメです
予想PLの作成
売上、原価、販管費までの過去からの傾向とその要因、そして将来予想がここまででできました
ここまで来れば、会社の業績への理解がで深まっていると思います
そこでこの3点含めた予想PLを作成してみます
すでに営業利益までは、ここまでやっていただいた内容で予想できている状態となっています
あとは補完的に営業利益以下の「親会社株主に帰属する当期純利益」までを、これまでと同様の流れで作成してみてください
最低限としては、今期と来期の2期、できればこの先5年分くらいまで作成しておくと長期投資の視点からもとても有益です
ここで大事なことは、予想PLを通じて数値化していくと、その作成したPLがどの程度の確度を自分自身で持てているか実感できます
また、不明点がいくつも出てくるはずなので、不明点は調べたり、分析、IR問い合わせなども活用して可能な限り具体化してください
そして予想PLをブラッシュアップして…
この作業を繰り返していくと自ずと不明瞭な点が、可能な限り解消されるとともに自身でも納得のいく予想ができてくるはずです
数値化することの重要性
ここまでやってもらったことは、実は「企業分析③会社を知る(過去を知る)」の記事を読んで先に実践していただいた方には同じ事やん!と思われたかもしれません
基本的には同じことで、今回はあくまで「売上」、「原価」、「販管費」にスポットを当てたに過ぎません
理由は、会社の業績が今後成長する、安定しているかどうかなどは、基本的にほぼすべてがこの3点に集約されているからです
逆を言うとこの3点をできる限り正確に理解し、予想することができれば、株式投資に関する企業分析のほとんどができていると言っても過言ではありません
企業分析がしっかりできていれば、後はPERなどから市場期待がどの程度かを検証し、割安と判断できれば、自信を持って買い判断ができるようになります
PERなどについては、次の「企業分析⑤PER?PBR?」で活用方法を紹介しているので、併せてご参照ください
最後に
ぼくは常日頃からファンダメンタルズ分析(個人的には企業分析と言っています)は、書籍などで紹介されているような各指標を使いこなすことが重要ではなく、
企業の本質を知る、深く理解することが大切と言っています
その客観性のある最たるものが企業の業績、特に事業の結果である「売上」、「原価」、「販管費」です
この3項目を深く理解し、そこから今期以降の将来を予想していくことが、株式投資でいう企業分析の根幹であると考えています
この点を深く理解せずにありがちな指標を見たり、分析したりしても会社本来の姿は見えてきません
会社の事業の特性という定性的な面への理解を深めるとともに、業績を中心とした定量的な面も深く理解することで、他の投資家が気付かないような本質的な点にも気づくことができるようになります
これが企業分析をベースとした株式投資の本質であり、長く勝てる投資家になるための秘訣だと思います
独り言
この記事を書いている時点でTwitterを始めて1年半ほどになりました
Twitterスタートはかなり遅めなタイミングです
Twitterでも投資をメインに発信ややり取りをしているのですが、改めて強く感じたことがあります
個人投資家の多くは明確な根拠なく株式の売り買い(特に買い)をしているのでなということ
根拠なき投資は株価が下がった時にどうしても塩漬けになりがちです
「いつかは株価が戻るのではないか…」と
もちろん戻る場合も多々あるため一概に何が正しいかは結果論でしかありませんが、
大事なことは自身で判断して大切な資産を守る、また、育てることができるようになること
だと思います
個人的な考えでは、雰囲気投資ではこれらが難しく、それであるならばインデックスに長期積立のような投資法が、
必要以上にリスクを負うこともなく、精神的に穏やかにできる最良の投資ではないでしょうか
当たり前のことにはなりますが、結局は自分に合った投資法を見つけ、続けていくことが長期投資で資産を増やしていくことの秘訣です