すでに個別株への投資をされている場合、以下の点についてどれだけ具体的に答えられるか、考えてみていただけるでしょうか
- 投資先がどのようにお金を稼いでいるか(売上がどんなものか)
- お金を稼ぐために何を商品・サービスとして提供し、どの程度/どのように支出・投資を行っているか(原価がどんなものか)
- 会社が事業継続のため、および、商品・サービスを提供していくためにどのような支出・投資を行っているか(販管費がどんなものか)
いかがだったでしょうか
これを具体的かつ誰かに理解してもらえるように説明できる方は素晴らしいです
ここで終わっていただいて違うものを読んでいただいたほうが良いです
ただおそらくはそのような説明が自信を持ってできる方は、ほとんどいないのではないでしょうか
僕の主観では個別株投資をしている方のうち、10%もいないと考えています
ただ一方で、短期のデイトレやスイングなどを除き、中長期投資で投資先の会社のこれらのことが答えられないことは、リスクのある投資をしているとも言えます
それはなぜか?
理解できていない、もしかしたら業績が大きく落ち込む可能性の高い会社に、投資をしているかもしれないからです
あ!?やば!?当てはまるかもと思った場合は、この後を読み進めてください
目次
売上とは?
短信で日本基準では「売上高」、IFRS基準では「営業収益」などとよく表記されていますが、
そもそも「売上」とは何でしょうか?
僕の個人的な意見では、
売上 = 事業を通じてお金を得る(た)行為
と大まかには定義づけています
こうしておくと、売上を知ることは、会社が「事業でどのようにお金を得ているか」を知ること と考えることができます
※「お金を得ること」に否定的な場合は、「付加価値を生むこと」と読み替えてください
では、会社は事業を通じてどのように売上を生み出しているのか(お金を得ているのか)
売上を生み出す方法としては、大きく2つに区分されます
- 商品:物を売る
- サービス:コトを売る
商品であれば、どんな物か、どんなニーズがあって買われるのか、
サービスであっても、どのようなサービスか、どんなニーズがあって利用されるのか、
これらを調べていくと会社のことを深く知ることができます
そうしていくと、
「唯一無二のものである」や「ニッチだけども高いシェアがある」、「競合他社は多くても競争力(付加価値)の高い商品・サービスを提供している」などの強みやその逆の弱みが理解できてきます
「売上を知ること」
これが個別株への中長期投資の最も基本的な企業分析と言えます
原価とは?
売上のことがわかってくると、次は「原価を知る」ことです
ここでも質問です
「原価」とは何でしょうか?
ここも僕の個人的な定義づけで恐縮ですが、
原価 = 売上のために直接的に必要なもの
としています
商品ならばその商品を作るために必要な原材料や加工費、工場などの資産の減価償却費、輸送費、それらのための人件費など
サービスならばそのサービスを提供するために必要な人件費やシステム費、設備やソフトなどの資産の減価償却費など
が挙げられます
これらを知ることにより、どのようにモノづくりをされ、サービスを提供しているか、事業モデルが明確になってきます
さらに売上と原価を知ることで、どれだけの付加価値を生み出せているかや過去からの流れも知れば、その付加価値がどのように変遷してきているかなどの理解も深まります
この辺りから会社の将来像も描けるようになってくるはずです
「原価を知ること」
により事業モデルへの理解が深まり、売上と合わせることで会社の強みや弱み、付加価値などがクリアになります
販管費とは?
ここでの最後の「販管費」を知ることです
販管費とは、「販売費及び一般管理費」の略で、大きくは「販売費」と「一般管理費」に区分されます
※ここでは、研究開発費も別区分にしています
販売費は字の通り、広告宣伝費や販売促進費などの「販売(売上)を増やすための活動」です
これはおそらく特に説明しなくても、イメージを持っていただけている前提で省略します
一般管理費は、「営業活動や会社運営に関わる全般的な費用」言い換えると「会社運営に必要な費用」です
多岐にわたりますが、主なものとしては、人件費や固定資産などの減価償却費(それぞれ原価に含まれるものを除く)、家賃、水道光熱費、各種手数料などです
これらは会社の売上の増減に関わらず、一定程度の規模で費用となるもの(いわゆる固定費が多い)です
それ以外に研究開発費が会社によっては大きな割合を占めますが、この項目だけは性質が少し違うため、別の視点で注目しておく必要があります
では、これらでそれぞれ何がわかるかですが、
販売費 → 売上対してどの程度支出しているか、また、支出の多寡により売上などがどう変化しているか
販売費は売上や売上に関わる重要指標(KPI)との比較で見ていきます
例えば、販売費をほとんどかけなくても売上が伸びている会社と、販売費を多く支出しないと売上が伸ばせない会社では、成長性や安定性に大きく違いが出ます
また、販売費は比較的会社側で調整ができる項目です
予算が決まっていて業績計画を策定するも、もし販売費予算を消化しなかっただけでも業績はその分だけ向上します
しかし、販売費を抑えたことが良かったかどうかはそれだけではわかりません
短期的には業績向上して株価が上がるかもしれませんが、長期的には別の視点を持つ必要があります
一般管理費 → 固定費的に見て事業運営に最低限どれだけの支出が必要か
販売費は、市況が悪くなったりした際には、支出を絞ることも可能は変動費要素が強いですが、
一般管理費は人件費や事務所の家賃などが中心であるため、ある程度は削減が可能でも大きく減らすことが難しい固定費的な要素が高い項目です
そのため、一般管理費に対しては、会社の事業運営に最低限どの程度必要かという視点を持つことが大切です
特に会社の成長とともに一般管理費も増えているなら正常ですが、会社が伸び悩んでいるにもかかわらず、一般管理費だけ増えている場合は、特別な理由がない限り問題ありと見るべきです
また、一般管理費は会社運営を1年間継続するために最低限必要な費用とも言い換えることもできます
手元資金と借入などの有利子負債、それと一般管理費のバランスを見て、会社の安全性を知る(何年くらいは事業継続できそうか)ことも大切です
研究開発費 → 将来の商品・サービスを生み出すためにどれだけ支出しているか
研究開発費は、製薬企業などのように多額を支出している会社もあれば、サービス業など支出がほとんどない会社もあり、事業の性質に大きくよります
そのため、研究開発に多く支出しているから良い、研究開発を全然していないから悪いというものではなく、今まで見てきた中で事業の性質を知ったうえで見ていくことが重要になります
それを前提に、将来の売上のためにどの程度積極的に先行投資をしているかの1つの指標になるとも言えます
この項目も事業の特性や過去からの流れ、売上の増減との関係なども意識しながら見ていくことが大切です
まとめ
ここまではあくまで「売上」、「原価」、「販管費」の基本部分に絞って見てきました
会社の事業運営は、社会的意義の部分を除けば、言い換えると「どのようにお金を増やしていくか」とも言えます
ここから深めていくためには、会社毎や事業毎に性質は違うため、上記の視点を意識しながら1つ1つ調べ、理解を深めていくことが大切です
この3点の理解を深めることで、会社への理解も深まります
個別株への中長期投資を考えている、または、やってみてはいるけどよくわかっていなかった、という場合は、まずはこの3点の理解を十分に進めてください
最後に
余談です
僕の個人的な考えでの「投資」とは、
「その会社へ未来を託すために出資する」
です
そのために自分が応援したいと思う会社へ投資をするようにしています
諸事情によりすべてがまだそのようにはできていませんが…
これを前提とするならば、「会社のことをよく知る、よく知るためにその基礎知識を身に付ける」ことは必須だと考えています
会社のことを深く知るためには、その会社の「売上」「原価」「販管費」がどんなものなのかを知ること、これも大事な要素になります
投資 = 資産を増やす
これだけを目的にしてしまうと、とてもつまらないものになってしまうのではないでしょうか
自分もその会社への応援として投資することを通じて、その会社が誰かを笑顔にし、社会の役に立ち、そして成長していく
そのうえで株価も上がり、その恩恵の一部を分かち合うことができる
これができれば投資の意味は単なる資産を増やすだけの目的のものから、全く違う意味を持つようになるのではないでしょうか
これはあくまで個人的な意見です
ただ、僕自身はこの考え方を大切にして、インデックスやFX、暗号資産などへの投資は一切せず、個別株にこだわってやってきて、これからもそうしていくつもりです