Zホールディングス(以下、ZHD)と楽天グループ(以下、楽天)の国内ネット大手2社の投資という視点での魅力について比較!
比較してみると、改めてわかることなどもあってなかなか面白いです
読み進めていただく前にまず2社の投資ポイントについて、知りたいときは以下をご覧ください
目次
独断と偏見の判断結果!
- ミドルリスクミドルリターンを目指すなら:ZHD
- ハイリスクでもハイリターンを目指すなら:楽天
両社はどちらも大きな成長期待ができる強みも持ちつつも、それが失敗に終わるなどの弱みももちろんあります
性質が違う点も多いため、どちらかの一方が良いという判断ではなく、自分の投資目的にあった銘柄選びが良いです
言えることはリスクの理由はそれぞれ違いますが、両銘柄ともに同じ時価総額規模の高配当銘柄あたりと比較するとリスクは高めです
この判断に至る比較について、以下の項目別に見ていきます
比較項目
- 売上高規模
- 収益性
- 時価総額
- PER
- 成長性
- リスク度
- 資本力
- セグメント別/広告事業
- セグメント別/EC事業
- セグメント別/フィンテック事業
- セグメント別/その他事業
比較①売上高規模
「売上高」を直近の業績で比較してみると、
- ZHDの2022.3期:1兆5,674億円
- 楽天の2021.12期:1兆6,817億円
と楽天が上回っていますが、直近の両社の売上高の成長性を比較すると、ほとんど差はないといえる状況です
項目が多いのでどんどんいきましょう
比較②収益性
「収益性」を直近の営業利益で比較してみると、
- ZHDの2022.3期:1,895億円
- 楽天の2021.12期:▲1,947億円
とプラスマイナスを無視すればいい勝負ですが、収益性はZHDの圧勝です
ただし、後ほども紹介しますが、楽天はモバイル事業で営業損失▲4,212億円を計上しており、これを除くと、2,265億円(日本の会計基準ベースでは1,962億円)と意外にも楽天がZHDを上回る結果です
なお、ZHDも経常利益ベースで見ると、関連会社のPayPayと出前館の損失が大きく計上されており、最終利益は営業利益からは大きく減少しています
比較③時価総額
「時価総額」は日々変動するため、あくまで執筆時点での比較となりますが、
- ZHD:3兆2,000億円規模
- 楽天:1兆1,000億円規模
とZHDは楽天の約3倍近くの時価総額となっています
業績や事業内容を分析する限り、知名度や規模、成長性などには大きな差はないとの判断より、やはり楽天のモバイル事業の大赤字が時価総額を大きく下げるに主要因となっています
比較④PER
「PER」についても2021年度の業績に対する執筆時点の株価での比較として、
- ZHD:41.6倍
- 楽天:-
ZHDの株価は高値からは大きく下がってきている状態ですが、それでもPER40倍台とグロース株水準の高いPER、高い人気を誇っています
残念ながら楽天は利益を出せず損失の状態のため、PERは計算できません
PERはどちらが良い悪いと判断する基準のものではないですが、楽天が当期利益がマイナス着地の時点でZHDが優位と言えます
比較⑤成長性
「成長性」は判断するモノサシにより結果が変わるため、一概には言えませんが事業別に見てみると、
- どちらも主力事業の広告・ECは順調に利益を稼ぎ、安定的に成長しており甲乙つけがたい
- ZHD:フィンテック事業の中心のPayPayとその他に出前館がマイナス先行の状態、どこまで黒字化/収益化できるか
- 楽天:フィンテック事業も順調に成長し利益を稼ぐ一方、モバイル事業が大きな重荷、どこまでの成長性を示せるか
上記はすべて次の比較⑥リスク度と比較⑧~⑪セグメント別と説明内容が重複するため、説明はそちらへ後回しにさせてもらいます
比較⑥リスク度
「リスク度」については独自の視点で書かせていただきます
- ZHD:高PER銘柄であること&PayPayと出前館が収益化するかどうか
- 楽天:モバイル事業が収益化するかどうか
の視点から楽天がリスク度は高く、厳しい状況です
ZHDについて、PER40倍台とグロース株並の高さです
少しでも成長スピードが鈍化すれば、株価がさらに急落することを意味しているとも言えます
さらに現在のような金利上昇化や景気減速懸念などの際にはグロース株は株価を大きく下げる傾向があります
これが1つ目のリスクです
2つ目のリスクに、ZHDのグループ会社の中で業績がまだ厳しい状況であるのがPayPayと出前館です
ZHDの決算説明では、PayPayは積極的な広告等の先行投資費用を除けば黒字化を達成できていると説明されています
キャッシュレス分野では同グループのLINEペイも含めれば、圧倒的な顧客数と加盟店を誇っているため、この点はリスクとしては比較的小さくなってきています
一方出前館は、まだ広告費や配達員へのインセンティブなど積極的に先行投資を行っている段階で、損失は拡大を続けています
ZHDは2022.3期でも保有する出前館株への多額の評価損失を計上しており、もし出前館がこけることになれば、さらに多額な損失計上となる可能性も懸念すべき点です
対する楽天ですが、
楽天はモバイル以外の各事業は比較的安定成長を続けており、既に書いたようにモバイル事業を除いた利益水準ではZHDを上回っています
しかし、その2倍以上の損失計上をしているモバイル事業が大きなリスクです
モバイル事業への多額の投資資金の工面も苦慮しているように見受けられます
モバイル事業の黒字化/収益化に懸念があるため足元の株価が低迷しているとも言えます
比較⑦資本力
「資本力」においては、各社の親会社や大株主などの株主構成がどうなっているかが重要です
- ZHD:ソフトバンク(以下、SB)の子会社、LINEの統合に伴い、韓国企業のNAVERもZHDの株式をSBと同率保有
- 楽天:現在も三木谷ファミリーが全体の1/3程度を保有、その他として日本郵政が大株主として参画
この点は両社で特徴が大きく分かれます
ZHDは元々ヤフーが母体の会社であり、設立当初よりSBのグループ企業(SBと米Yahoo!との合弁会社)としてスタートした経緯が、今でも株主構成の中心です
そこから2019年にLINEとの統合の際に、NAVERが資本参加することとなり、現在の株主構成になっています
大手企業グループ2社がZHDを支えており、資本力としては申し分ないと言えます
ただし、2社の関係が良好な間は問題とはなりませんが、SBとNAVERの関係が悪化するようなことがあれば、ZHDの経営に大きく影響が出る可能性があります
楽天は三木谷社長が創業した会社であり、その流れが株主構成にもそのまま表れています
日本郵政は、楽天との物流を中心に幅広い点で資本業務提携を結んだことで、1,500億円もの出資による大株主として資本参画していますが、
三木谷社長(またはその家族)が株主の中心という構図で、資本力としては頼る先がなく、この点はZHDと比較して見劣りする点です
比較⑧セグメント別/広告事業
「広告事業」を直近のセグメント別の売上高で比較してみると、
- ZHD:5,815億円
ヤフーとLINEの合算数値 - 楽天:1,579億円
※内部取引に係る広告売上高を含む
ここはさすがヤフーとLINEを要するZHDが、圧倒的に優位なポジションを確立しています
やはり検索サイトのYahoo!JAPANとSNSツールのLINEが国内での高シェアを誇っていることが要因で、確固たる地位を得ていることが広告事業の売上高からもわかります
楽天もZHDには見劣りしますが、楽天経済圏と言われるくらい、楽天市場を中心としたネット経済圏を確立しており、そこから得られる広告収入も大きな事業へ成長しています
広告事業の成長性では、どちらも直近期では2ケタ成長しており、両社の基盤を支える1つの事業としては魅力的と言える点です
比較⑨セグメント別/EC事業
「EC事業」は取引流通総額で比較します
- ZHD:3.57兆円
- 楽天:5兆円を突破
ここはさすがの楽天経済圏がリードを守っています
楽天はコロナ禍を機に成長スピード加速させ、2020.12期に4兆円突破に続き、2021.12期には5兆円を突破と破竹の勢いです
売上高も7,119億円と前期比+18%と好調な成長を続けています
ZHDも規模では楽天に劣るもののLINE統合により拡大、2020.3期から2022.3期の2年間で流通総額が約1兆円を増加し楽天を追走
売上高はコマースセグメント全体では、8,091億円と集計範囲などの理由により単純比較はできませんが、楽天を上回る規模です
広告事業とともにEC事業も、互いの魅力的なもう1つの基盤事業として成長を続けています
比較⑩セグメント別/フィンテック事業
「フィンテック事業」は直近の売上高で比較してみると、
- ZHD:1,142億円
- 楽天:6,190億円
※内部取引による売上高も含む
楽天は内部取引も含む金額で公表されているため、明確な比較は難しいですが、楽天に軍配です
ZHDのフィンテック事業はPayPayによるペイメント、カード、銀行とLINE証券などが中心で、後発組でもあるため、まだ規模も成長途上で利益面もマイナスの状況です
楽天はカードが2,500万枚超と圧倒的シェアを誇っているのを筆頭に銀行、証券、保険、ペイメントと広く取り扱っていることが特徴
セグメント利益も900億円近く稼ぎ出す楽天の重要事業基盤の1つです
楽天は銀行と証券の上場準備を発表しており、これら子会社2社が上場となれば、フィンテック事業の親会社としての収益性の低下はもったいないようにも感じます
比較⑪セグメント別/その他事業
その他としては、
- ZHD:関連会社に出前館が存在し、数百億円規模の損失を計上
- 楽天:注力しているモバイル事業が4,200億円規模の損失を計上
両社の大きな違いはある意味、この点かもしれません
ZHDは、関連会社の1社として出前館(合計出資比率が40%弱)をグループに持ちます
出前館の2021.8期は約220億円の損失、2022.8期は第2Qの時点で、すでにこの額を超える規模の損失を計上しています
現在のところは重荷の状態ではありますが、出資比率的にも負担は軽減されている仕組みです
楽天は楽天モバイルが100%子会社です
また、売上高2,275億円と大きく成長している一方、損失が4,212億円と多額であり、他の事業利益でその半分程度しか賄えていない状況です
どちらも先行投資が必要なグループ会社(ZHD:PayPay、出前館 楽天:モバイル)がありますが、投資規模の違いから業績に大きな差が出てしまっている状況です
最後に
国内のネット大手2社ZHDと楽天を11項目の観点から比較して見てきました
このように比較しながら両社を見ていくと、1社のみでは見えてこなかった強み・弱みがより鮮明になります
初めにも書きましたが、投資先としてどちらが良い・悪いということではなく、自身の投資の目的に合った銘柄選びによります
個人的にはどちらも将来さらに大きく飛躍する可能性を秘めた企業グループです
投資のポイントを見極めつつ、今後も注視していきたい2銘柄です
注意事項
※投資判断はご自身の責任において行うようにしてください
記載の内容はあくまでも僕個人の見解と情報収集によるものです
そのため、必ずしも正確、適切な情報を保証しません
また、データが古くなっている場合もありますのでご活用の際にはご注意ください